USB メモリ活用講座
【TeX Live マネージャと jlreq ドキュメントクラス】

< 最終更新日: 2022-04-09 >

tlmgr コマンド

tlmgr はコマンドラインから起動する CUI 版の TeX Live マネージャです. 直観的に操作できる GUI 版の TeX Live マネージャ (tlshell) に比べるとヤヤコシイと感じるかもしれませんが,tlshell では手が届かない細かな設定変更などが可能です. 古くからの TeX ユーザは,パッケージやフォントを追加するとなると,CTAN から配布ファイルをダウンロードして,unzip などで展開 (解凍) し,ファイルやフォルダを TeX の流儀に従って正しく配置した後に mktexlsrupdmap を呼び出すといった作業を,確実にこなさなければなりませんでした. tlmgr はそれらをひとまとめにして実施してくれるので,気軽にパッケージやフォントの追加・削除を試すことができます. tlmgr の詳細は texdoc tlmgr から表示されるマニュアルで網羅されていますが,ここでは特に重要・便利と思われるものをピックアップして紹介します. なお,TeX Live を NTFS フォーマットのドライブにポータブルインストールした場合や,全ユーザ向けにローカルインストールした場合には,管理者権限のコマンドプロンプトから tlmgr を起動しなければ目的の動作をしてくれない場合があります (TeX Live インストール前の予備知識 参照).

tlmgr option show
現在の TeX Live の設定を確認します. 英文で 10 項目 (10 行) の設定値が出力されます. autobackupbackupdirrepository あたりは要チェックです.
tlmgr option repository value
TeX Live のリポジトリを value に変更します. value に何も設定しないと,現在の設定値が表示されます.
TeX Live インストール時に「インストール後に CTAN をパッケージのアップデート元に設定」をオフにしていた場合には,ISO イメージがマウントされたドライブ (D:/ など) に設定されているはずです. パッケージを追加しようとして ISO イメージをマウントしたら,ドライブレターが変わってしまったという場合には,このコマンドで変更すればよいでしょう.
valuectan を指定すると,CTAN のミラーサイト (http://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet) が設定されます (URL を正確にタイプする必要がないので便利です).
tlmgr option autobackup n
TeX Live でパッケージの更新や削除を行う場合のバックアップ回数を n に変更します. n に何も設定しないと,現在の設定値 (デフォルトは 1) が表示されます.
USB メモリのアキ容量が心配な場合は,0 としてバックアップを作成しないようにするか,次の backupdir を変更することを検討するとよいでしょう.
tlmgr option backupdir path
TeX Live でパッケージの更新や削除を行う場合のバックアップファイルを保存するフォルダを path に変更します. path に何も設定しないと,現在の設定値が表示されます. デフォルトでは TeX Live のインストール先 (U:/texlive) の tlpkg/backups が指定されているはずです.
USB メモリのアキ容量が心配な場合は,C:/temp のように PC のローカルディスク上のフォルダにしておくのも一案です.
tlmgr info value または tlmgr list value
TeX Live のリポジトリから,value に関する情報を検索します.
value にコレクションやパッケージ名を指定すると,インストール済みかどうかや,サイズの目安などの情報が表示されます. パッケージ名を指定した場合のサイズは run/src/doc/bin の 4 区分になっているそうです. run はフォントの実体やスタイルファイル類,src はソースファイル類,doc はドキュメント類,bin は実行ファイル (コマンド) 類に相当するようです. コレクションを指定した場合のサイズは,そのコレクションに直接含まれるパッケージの総合計で,依存関係にあるコレクションは含まないようです.
ファイル名や,その一部分を指定すると,それを含むパッケージのリストが表示されます. 組版や PDF への変換処理の際にパッケージが見つからないといったエラーが発生したり,予想外のフォントの代替処理や PK フォント生成が行われたりしたときのトラブルシュートに役立ちます.
tlmgr install pkg
pkg で指定するパッケージをリポジトリから追加 (インストール) します. 複数のパッケージを空白で区切って指定することもできるようです.
tlmgr uninstall pkg または tlmgr remove pkg
pkg で指定するパッケージを削除 (アンインストール) します. autobackup0 以外の場合には,backupdir にバックアップが作成されます.
tlmgr update --self
tlmgr そのものをリポジトリから更新 (アップデート) します. Windows では Perl インタプリタもアップデートされるそうです. プロキシ経由のインターネット接続をしている場合には,事前に 環境変数の設定 が必要です.
tlmgr update --all
tlmgr を除いた全てのパッケージをリポジトリから更新 (アップデート) します. 利用しているパッケージが多い場合には,相応の時間がかかりますので,時間にたっぷり余裕があるときに実施しましょう. --self--all を同時に指定することもできるようです. プロキシ経由のインターネット接続をしている場合には,事前に 環境変数の設定 が必要です.
autobackup0 以外の場合には,backupdir にバックアップが作成されます.
tlmgr restore pkg
backupdir にバックアップされた pkg パッケージを復元します. 削除や更新をしたら不具合が生じたような場合に,バックアップがあれば"巻き戻し"ができることになります.

jlreq のための追加作業【参考】

注意: TeX Live 2022 では以下の作業を行わなくても jlreq が利用できるようになったようですが,参考として残しておきます.

jlreqW3C (World Wide Web Consortium) が示す「日本語組版処理の要件」に準拠するよう,阿部紀行氏が作成された新しいドキュメントクラスで,pLaTeX,upLaTeX および LuaLaTeX で利用できます. 本講座の TeX Live のインストールに従った構成では,jlreq が内部で呼び出すパッケージが不足しているようです. 組版処理で発生するエラーをなくすためには,everyhook と svn-prov の 2 つのパッケージを追加する必要があります. これら 2 つのパッケージは TeX Live の colleciton-latexextra に含まれています. USB メモリの容量や自分なりのポリシーに従って次のどちらかを選んで作業してください.