USB メモリ活用講座
【基礎編・Inkscape のポータブル化】

< 最終更新日: 2024-02-13 >

Inkscape Portable のインストール

Inkscape は線図(ベクター図)を描くことができるドローソフトです. GPL (GNU General Public License) に従い無償で利用することが可能です※1. Inkscape は Web 標準として勧告されている SVG (Scalable Vector Graphics),デファクトスタンダードとして広く使われている PDF (Portable Document Format) の読み込みと保存に対応しています. また,TeX 文書に挿入するグラフィックスフォーマットとして,定番であった EPS (Encapsulated PostScript) への保存にも対応しています. さらに Ghostscript が呼びだせる環境であれば EPS ファイルの読み込みも可能です.

Inkscape と機能的に類似しているソフトウェアとして LibreOffice Draw (OpenOffice Draw) があります. どちらかといえば,Inkscape の方が起動や動作が遅く感じられますが,そのかわりにアート系のグラフィック描画に向く機能が充実しているようです※2オリジナルの配布サイトでは,高品質な作品例 (Gallery) や,公式の日本語チュートリアル (未訳部分あり) などが公開されています.

USB ポータブル化に対応した Inkscape Portable が PortableApps.com から提供されています. これをインストールするには,265~354MB のアキ容量が必要です. インストール作業の時間と手間を惜しみたいという方は,PortableApps.com Platform のインストールと使い方PortableApps.com Platform を利用したアプリ追加とアップグレード を参考にするとよいでしょう. 以下では,USB メモリに割り当てられたドライブレターが U: であるものとして,手動で Inkscape Portable をダウンロードして,インストールする手順を簡単に紹介します.

  1. PortableApps.com から [Apps]-[Graphics&Pictures]-[Inkscpae Portable] とたどり,Inkscape Portable の Multilingual 版をローカルハードディスク (C:\temp など) へダウンロードします.
  2. 後はダウンロードしたインストーラを起動し,LibreOffice Portable と同じような順序で,作業を進めます. 途中,図 1 のようなコンポーネントの選択画面が表示されるので,日本語表示を利用したい方は必ず Additional Languages にチェックしておいてください.
    図1・Inkscape のコンポーネント選択
    図1・Inkscape のコンポーネント選択
  3. インストールが終わったら,PortableApps\InkscapePortable にある InkscapePortable.exe を必要に応じてランチャ (PStartPSMenu など) に登録します.
  4. この設定は任意です. Inkscape Portable の起動時に表示されるスプラッシュスクリーン画面を抑制したい方は,起動時のスプラッシュスクリーン画面表示抑制 に従い作業します.
  5. 警告: この設定は,くれぐれも自己責任でお願いします. Inkscape Portable には多くの言語対応ファイルが含まれます. 英語と日本語だけあれば十分と考える人は,エクスプローラなどで PortableApps\InkscapePortable\App\Inkscape\share\locale フォルダを開き,enja だけを残して他のフォルダを削除すると,約 52MB ディスクの空きが増やせます.

なお,現在の Inkscape には描画時に利用可能なフォントがシステムフォントに限定されるという制約があるようです. すなわち,PortableApps.com Platform のフォントのポータブル機能フォントインストーラー SAKURA の一時インストール機能で一時的に登録するフォントを利用することが,残念ながらできないようです.

Inkscape Portable の日本語化設定

Inkscape Portable を起動したときに,メニューが英語表示になっていた場合は,次のように操作すれば日本語表示にすることができます.

  1. メニューバーから Edit-Preference とたどり Preference ダイアログボックスを表示させます. ダイアログボックスが小さければ,四隅をマウスでドラッグするなどして大きさを調整してください.
  2. 図 2 の左のカラムで Interface をクリックし,右のカラム上部の Language (requires restart)Japanese (ja) を選択します.
    図2・Inkscape の Preference ダイアログボックス
    図2・Inkscape の Preference ダイアログボックス
  3. 図 2 右上の × (閉じるボタン) をクリックしてダイアログボックスを閉じ,Inkscape を終了させて,もう一度起動すれば日本語メニュー表示になっているはずです.

【付録】Inkscape を使った EPDF 画像への変換法

Inkscape を使うと Calc や Impress,Microsoft Excel や Microsoft PowerPoint などで作成するグラフや線図を EPDF (Encapsulated PDF) に変換することができます. EPDF は,TeX 文書などに挿入するグラフィックスフォーマットとして利用することが可能です. 従来は TeX 文書に挿入するドロー形式のグラフィックスフォートマットといえば,EPS (Encapsulated PostScript) が一般的でしたが,EPS では組版や PDF への変換の際に,バックグラウンド処理として Ghostscript を必要とする場合があるなど,依存性や応答性の面で改善の余地がありました. EPDF ではそれらが改善されるそうです.

他のソフトウェアで作成したグラフ等のオブジェクトを,EPDF 形式に変換するには,次のような手順で作業します (Draw を使った EPS 画像への変換法も参照してください).

  1. 変換したいオブジェクトを選択し,クリップボードにコピーします (右クリックして コピー など).
  2. Inkscape を起動し,ペースト (貼り付け) を行います. 貼り付けられたオブジェクトが選択された状態のままで,次の作業に進みます.
  3. ファイル-ドキュメントのプロパティ をクリックし,ドキュメントのプロパティダイアログボックスを表示させます.
  4. 「ページ」タブの「カスタムサイズ」欄にある「ページサイズをコンテンツに合わせて変更」をクリックすると,図 3 のような表示となります.
    図3・ドキュメントのプロパティダイアログボックス
    図3・ドキュメントのプロパティダイアログボックス
  5. 単位や上下左右のマージンを使用目的に応じて設定したら,ページサイズを描画全体または選択オブジェクトに合わせる をクリックすると,貼り付けたオブジェクトをちょうど収めるような紙面サイズに調整されます※3
  6. ファイル-名前を付けて保存 をクリックし,ファイルの保存先の選択ダイアログボックスを表示させます.
  7. ファイルの種類を「Portable Document Format (*.pdf)」に変え,場所とファイル名を適当に設定したら,保存 ボタンをクリックします※4. 後で編集加工することを想定して,Inkscape デフォルトの SVG 形式でも保存しておくことを推奨します.