「チャレンジできる環境」を存分に活かそう!

中村 浩祐さん

長岡高専 教育研究技術支援センター 技術職員

中村 浩祐

経 歴

2009年 長岡高専 電気電子システム工学科 卒業
2011年 長岡技術科学大学 電気電子情報工学課程 卒業
2013年 長岡技術科学大学大学院 電気電子情報工学専攻 修了
同 年 NECソフト(現NECソリューションイノベータ) 入社
2022年 長岡高専 教育研究技術支援センター 第2グループ(電気電子担当) 所属

「電気? それとも制御?」で悩んだら

──中村さんは「高専に入学して良かった」という瞬間はすぐに訪れましたか。

 中学生の頃からパソコンが好きで、将来はプログラマーのような専門職に就きたいと思っていました。中学校の先生に相談すると、高専を勧められ、オープンキャンパスにも参加して志望校に決めました。電気電子システム工学科には、共通の趣味を持つ人が多く、クラスメートとは休み時間にゲームの話やプログラミングの話もできて、楽しかったですね。気の合う仲間が増えました。

──「電気電子システム工学科」と「電子制御工学科」で迷いませんでしたか?

 正直、入学前は違いがよくわかっていませんでしたが、当時は電子制御工学科の方が、倍率が高かったので、電気電子システム工学科にしました(笑)。実際に入ってみると、2つの学科がカバーする領域は似ていますが、重点の置き方が違うんだなと感じました。少なくとも、私のように「プログラミングをしたい」という人なら、どちらでも学ぶことができます。

 私の場合は、電気電子システム工学科で、モーターや発電機のことから、半導体などの材料のことまで幅広く学んだことが後々、ソフトウェアを開発する上でも役立ちました。学生のうちから周辺領域に触れておくと、将来、自分のスキルの幅を広げやすいと思います。

 一方で、ロボットを動かすソフトウェアなど制御方面に興味がある人は、元々、機械工学科から派生している電子制御工学科の方が、よりイメージに近いかもしれません。ただ、専攻科に進学すれば、機械・電気・電子制御は同じコースに統合されますし、近い分野なので、そこまで心配しなくても大丈夫だと思いますよ。

高専で「やりたいこと」が明確に

──電気に関して幅広く学ぶ中で、ご自身の専門分野はどのように決めていきましたか。

 高学年になると、授業でマイコンボード(マイコン)を扱うようになり、これが面白かったので、自分の進みたい方向性が定まりました。マイコンは、ほとんどの電子機器に組み込まれている、機器を制御する電子部品です。パソコンやスマートフォンのように多機能で汎用性のある機器とは違い、電気ポットならお湯を沸かす、炊飯器ならご飯を炊く、といった特定の機能のために使います。

 最初にマイコンを触ったのは学生実験の時で、本格的に扱い始めたのは卒業研究(卒研)からです。ちょうど指導教官の先生が、マイコンを活用した教材開発で予算を獲得したタイミングだったので、私の卒研テーマとして行うことになりました。

 パソコンが、ソフトやアプリがないと動かないのと同じで、マイコンにもプログラムが必要です。LED電球を光るようにしよう等、学科の授業で習うことを使いながら、どうやって電子回路をつなげて、どんなプログラムを組むか、検討していました。

──大学に編入後も、高専で培ったことは役に立ちましたか。

 大学でも情報系の分野に進んだので、研究室に入ってからもスムーズでした。高専生は一度、研究を経験しているので、アドバンテージがあります。一方、大学で本格的に研究をしたことで「やっぱり高専での研究は初学者向けだったんだ」と思いました。高専では多少、実験がうまくいかなくても、失敗した原因と解決方法をきちんと説明できれば認められますが、大学では新規性等が厳格に求められます。いわば、高専の卒研では1回、失敗することが許されるんです。高専はチャレンジして、失敗ができる環境で、ここで失敗したとしても、また次の場所で、その経験を活かすことができます。私も大学生の時に、高専生だった頃を振り返りながら「あの時はこうしていたけど、今なら、もっとこうすればうまくできるな」と自分の成長を実感することができました。

──大学を卒業後は、どのようなお仕事に就かれたのですか。

 大学では組込みソフトウェア関連の研究をしており、その流れでシステムエンジニアとして就職しました。その中でも組込み製品のソフトウェアを開発する部署に配属され、ロボットや飛行機に搭載する装置などのソフトウェアの開発を行いました。

 企業では、BtoC、BtoBどちらに向けた製品でも、相手のニーズを把握することが重要です。私も、営業の人と一緒に顧客企業に足を運んだりしながら「この技術で何ができるか」という技術者視点だけでなく、「これを実現するために、どの選択がベストか」というユーザー視点で考えることを学びました。大学では、新規性が重視されますが、実際のものづくりでは、コスト面なども総合的に考えて、お客様のニーズが満たされるのであれば、必ずしも最新技術でなくても良いのです。

※BtoC(Business to Consumer)は企業が一般消費者にモノやサービスを提供するビジネス、B to B(Business to Busines)は企業同士のビジネスを指す。

夢に向かう人を応援する立場へ

──再び職員として高専に戻ることになった経緯は?

 勤続10年目の節目を前に、自分の働き方や今後のことを考えたときに、これまでの経験を活かしつつ、教育に携わる仕事にシフトしたいと思いました。大学で、教職課程も取得していたので、元々キャリアプランの一つとして視野に入れていました。そして、運よく母校の出身学科で技術職のポストを見つけ、「専門性の高い教育をする高専なら、民間企業で研究開発に携わった経験も生かせる」と、すぐに応募しました。

──現在はどのような業務を担当されていますか。

 実験・実習のフォローが主な業務で、機材・器具の準備や、実験中のサポートをしています。その時に、高専で習う内容が実際に会社でどのように使われているのか、なるべく伝えていくことで、少しでも学習意欲を高められたらと思っています。

 また、会社では、誰でも業務を行えるようにマニュアルを作る機会がありましたが、その経験が学校でも役立っています。詳しい人だけに通じるのではなく「みんなに分かりやすいように伝える」のも一つのスキルだと思います。

 業務外では、私も在学中から所属していた陸上部にまた顔を出せるようになったことが嬉しいですね。学生の時にお世話になった顧問の先生と一緒に、今度はサポートする立場で参加しています。

──いまの高専をどのように見ていますか。

 「実践的な技術を学ぶ」という核は変わりませんが、自分の夢を叶える準備をする学校という側面が強くなっているように感じます。起業に関するセミナーや講演も増えていて、技術だけでなく、自己実現のための方法も身に付けられるようになっています。

 卒業研究は4年生の後半から始まりますが、「プレラボ制度」で1年生の時から部活動のような感覚で研究に触れられるようになりました。各学科の先生が研究テーマを提示していて、その中で、取り組みたいものがあれば、他学科のテーマでも応募できます。自分が興味を持ったタイミングから始められて、知的好奇心が刺激されるプログラムだと思います。

──中学生や在学生に伝えたい「長岡高専の魅力」を教えてください。

 自分のペースで、やりたいことに存分に取り組めることではないでしょうか。私も勉強と両立しながら5年間、陸上部を続けました。大学受験のために引退する必要もなく「今日は部活、明日はプレラボ、明後日はアルバイト……」と自分で時間の使い方を決めることができます。

 最近の高専生は、目的意識を持って入学する人が増えているように感じますが、漠然とでも、やりたいことがある人にとっては、高専はどんどんチャレンジできる場所です。ぜひ自分の夢とその叶え方を見つけに来てください。

【取材・文】堀川 晃菜(長岡高専2007年卒)

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