仕事も趣味も! 人生の土台を築いた5年間

篭島 尚子さん

株式会社コロナ

篭島 尚子

経 歴

2013年 長岡高専 電子制御工学科 卒業
2015年 新潟大学 工学部 電気電子工学科 卒業
同 年  株式会社コロナ 入社
     技術本部 電装開発センター ソフトチーム 所属

楽しさも難しさも、想像以上!

──高専に進もうと思ったきっかけを教えてください。

 中学校の頃から数学や理科が得意教科だったので、進路も理系に進もうかと考えていた頃に、一緒に住んでいた祖父が長岡高専のことを教えてくれました。それで、オープンキャンパスに参加し、プログラミングの体験イベントにも参加しました。

 その頃からプログラミングにも興味があり、ゲームをするのが好きだったので、「どうやって動いているんだろう」と思っていました。そこまでパソコンを触っていたわけではないのですが、高専なら、そうしたことも本格的に学べるだろうと期待して入学しました。

 「高専」と聞くと「みんなすごい勉強している」っていうイメージがあると思うのですが、実際に入ってみると、みんな勉強も部活も楽しんでいて、良い意味で期待を裏切られましたね。

──実際にプログラミングを習ってみて、どうでしたか。

 実際にソフトを作る授業は結構、苦手だったんです。なかなか思い通りにいかなくて、他の授業よりも難しいなと思いました。2年生になるとC言語(プログラミング言語の一つ)の授業が始まって、自分でソフトを作って、実際に動作確認までを行いました。ソフトを作成する方法もアセンブラを利用したり、「シーケンス制御」の授業でラダー図を用いたり、さまざまな方法を知ることができたことが、一番印象に残っています。ほんの少しの間違いでも、ソフトの動作に大きく影響が出てしまうので、どこで間違ったのかを見つけるのに苦労しましたね。

※アセンブラとは、アセンブリ言語で記述されたプログラムを、コンピュータが直接解釈・実行できる機械語の表現に変換するソフトウェア。ラダー図は、機器や設備などの制御に使われる制御装置(コントローラ)であるPLCに使用される言語。

──苦戦された実習形式の授業、どうやって乗り越えましたか?

 同級生にいろいろ教えてもらいながら、なんとか乗り越えました! 同じ動作でも、プログラムの書き方は一通りとは限らないので、そこに個人差(個性)も現れるのですが「なるほど、こんなやり方もあるんだ」と他の人に教わるのはとても参考になりました。

 ちなみに私の学年では、電子制御工学科のクラスで女子は自分だけで、最初は仲良くなるまでに少し時間がかかったかもしれませんが、こうした授業中のやり取りなどをきっかけに、男女関係なく、自然と仲良くなりました。なので、あまり女子一人であることを意識せずに済みましたね。逆に、体育の授業では、他のクラスの女子と合同で行っていたので、そこで他学科の人とも交流できて良かったですね。

経験することで“自分”が見えてくる

──篭島さんは、部活動もしていましたか?

 2年生の時から、吹奏楽部でパーカッションをしていました。吹奏楽部は部員が少ないので積極的に勧誘していて、そのおかげで未経験でも入部しやすかったです。他にも未経験の人が多かったので、気後れせずに、楽しみながら上達することができましたね。

 学内では学園祭などのイベントで、学外では県内の他大学と合同で演奏する機会もありました。卒業研究が始まってからは、なかなか部活動に顔を出す機会も減りましたが、それでも卒業前の3月ギリギリまで活動していました。気づけば、すっかりアイデンティティーの一部になっていて、吹奏楽をきっかけで人脈も広がりました。今でも、吹奏楽を通じて知り合った人とは連絡を取っていて、他の大学で知り合った方から演奏会に誘われて、一緒に演奏したりしています。

 高専は、学科ごとに分かれてからはクラス替えがないので、どうしても人間関係が広がりにくいので、部活を通じて別のコミュニティにも参加できたのは良かったですね。

──5年生まで部活を続けられた一方で、卒業研究ではどんなことに取り組みましたか。

 「圧電振動子」という素子を使った研究をしていました。電気を通すと、振動する部品なのですが、この素子を使った等価回路(複雑なデバイスの内部要素を、その特性を表す最小限の要素に単純化したもの)について研究していました。どうもソフトをいじるのが苦手だったので(笑)、あえてソフト以外のことをやってみようと方向性を変えました

──進路については、どのように決めていきましたか。

 進学はギリギリまで悩んでいました。最初は、早い段階で就職したいなと考えていたのですが、先生方に相談に乗ってもらっているうちに、大学に行っておいた方が良いのではないかと考えるようになり、新潟大学に編入学しました。

 私は大学に進学してからも、ソフトではなく電気系の授業を多く受けていました。高専のクラスメイトの中から、私以外にも新潟大学へ進学した人がいましたが、それぞれ違う専攻に進んでいきました。

──編入後に「高専生の強み」を感じる場面もありましたか。

 高専では実験・実習で手を動かす機会が多く、計測機器の使い方などにも慣れていたので、高専からの編入生は大学でグループ実験を行う際にも、率先して動けているように感じました。卒業研究も、計画を立てるところから、研究成果をまとめることまで、一通り経験していたのでスムーズに進められました。

実践で生きる、高専の学び

──現在のお仕事ではどのような業務を担当されていますか。

 弊社はファンヒーターやエアコン、石油給湯機、エコキュートなどの設計、製造、販売を行っている会社で、私は製品のソフトの設計や、ソフトの評価を担当しています。どんな製品にするのか、製品の機能を考える部署は別にあり、私たちはその機能を実装するためのソフトを手がけています。

 こうした組織としての役割分担はありますが、ただ求められた通りにソフトを作るのではなく、どうすればもっと使いやすくなるのか、こちらから提案することもあります。依頼を受ける際にも、解釈の違いがないように、どんな動きにしたいのか、細部まで確認するようにして、コミュニケーションを大切にしています。そして、ソフトの動作確認をする時には、ユーザーであるお客様の目線で考えることを大切にしています。

 製品のハード面とは違い、ユーザーから直接見えない部分ですが、ソフトは使い勝手の部分にも大きく関わってきます。例えば、ファンヒーターだと、スイッチを押せば、火がつくわけですが、タイマー設定などの機能で、より便利にしたい時にそれを叶えるソフトが必要になります。家庭でもご使用いただく製品なので、自分の家族の顔も思い浮かべながら、使用されるシーンを考えています。

※エコキュートとは、電気エネルギーを使って、大気熱を有効に利用し、電気エネルギーの3倍以上の熱エネルギーを生む高効率な給湯機

──まさに、高専で学ばれたことが直接、関係しているのですね。

 そうなんです。仕事をしながら「これ授業でやった!」と思い出すことが多々あります。ソフトは、いきなりプログラムを書くわけではなくて、まず設計をしてからコードを書いていくのですが、設計方法を考えたりしている時によく思い出しますね。高専で使った教科書は、今も大事にとってありますし、時々、読み返すこともあります。制御だけでなく機械や電気、情報系の分野も幅広く学んでおいたことも、とても役立っています

 それから、卒業研究のプレゼン資料を作る時や発表練習の時に、指導教官の先生がとても熱心に教えてくださったおかげで、社会人として不可欠なスキルも磨かれました。専門的な知識だけでなくて、こうした素養を身に付けられたことにも感謝しています。

──学生に向けて、メッセージをお願いします。

 実験・実習やテスト勉強など、大変なこともあると思いますが、今を楽しみながら過ごしてほしいと思います。勉強以外にも、部活や学生会の活動など、楽しめることはたくさんありますし、高専で得た経験や、出会った仲間は、社会に出てからも大切な財産となるはずです。楽しむ気持ちを忘れずに、目の前のことに、ぜひ精一杯、取り組んでください。

【取材・文】堀川 晃菜(長岡高専2007年卒)

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