5年間積み重ねた「経験知」が最大の強みです

石田 祐太さん

オリエンタルモーター株式会社 制御機器システム事業部

石田 祐太

卒業生の石田祐太さん。現在はモーターの回路設計をする技術者として活躍。
写真は開発中のモーターを回し、電流などを測定して評価している様子(所属先提供)

経 歴

2008年 長岡高専 電子制御工学科 卒業
2010年 筑波大学 第三学群 工学システム学類 卒業
2012年 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 知能機能システム専攻 修士修了
同年 オリエンタルモーター株式会社 入社

教科書通りにいかないから、おもしろい!

──なぜ高専、そして電子制御工学科を選ばれたのですか?

 数学や理科が好きだったので、理系の進学先として選びました。塾の先生から「幅広く学びたいなら電子制御が良いのでは」と勧められたのですが、その意味は後からわかりました。世の中の家電や工業製品には、さまざまな技術が使われています。よくプログラム(情報)が“脳”で、電気・電子回路は“神経”、そして機械は“筋肉や骨格”に例えられますが、実際に動かすには、機械のこと、電気のこと、情報のことを知っておく必要があります。電子制御工学科では、情報工学を中心に機械工学科・電気工学科(現・電気電子システム工学科)と共通する要素を学ぶことができました。

──専門的に学び始めてみて、どうでしたか?

 実験・実習が面白かったです。プログラミングのコードを書いて、自分の思った通りに動かせたときは、嬉しかったですね。最初は簡単なプログラムで成功体験を積み重ねて、だんだん実践的な課題になってくると、教科書通りにはいかないことも多々あって。でも、そのぶん工夫のしがいもありました。

──特に印象に残っている実験はありますか?

 市販の炊飯器を制御して温泉卵をつくる実験がありました。一定温度で何分経ったら電源をオフにする、という比較的簡単なプログラムなのですが、うまい具合にいかず……。友人のお母さんのレシピが違ったかな、などと言いながら、グループ内で原因を探りました(笑い)。

 というのも、やはり実験をして終わりではなく、毎回レポート提出が求められます。レポートを書いては、また次の実験……というサイクルは大変ですが、先生もしっかり丁寧にレポートを見てくれます。学術論文の基礎を身に付けるために、実験の目的、結果とその根拠も、自分で調べながら考察する訓練になったと思います。

──高専生活で勉強以外に、楽しかったことは?

 5年間続けたサッカー部の活動です。全国の高専を対象とした高専大会があり、1~3年生は高校生が出場する大会にも参加できます。4~5年生でも大学生と試合の機会がありました。練習メニューも自分たちで考えながらやっていたので、それも含めて楽しかったです。私は寮に入らず、自宅から通学していたので、部活を通じて他学年・他学科のつながりができて良かったです。

卒業後に実感した「高専生の強み」

──高専卒業後の進路はいつ頃から考え始めましたか?

 真剣に考え始めたのは4年生の後半です。高専の専攻科に進学しようか、他大学に編入学しようか迷ったのですが、ロボット工学を学べる筑波大学を目指しました。それが5年生の春だったので、夏の編入学試験まで短期集中でしたね。

──それはやはり日ごろの勉強ができていたから?

 特に塾に通ったりもしなかったので、そう言えるのかもしれません。大学に入ってから感じたのは、特に実技に関して高専生はすでに一定レベルに達しているということです。同学年に他高専からも10人ほど編入生がいましたが、皆、測定器の扱いなどに慣れているので実習でテキパキ動けます。研究室に所属してからも、ちょっとした試作機を作ったり、実験で確認したり、手早くできるのは高専生の強みだと思いました。 大学の学生実験では、担当教員もいますが、各グループの世話役はティーチングアシスタント(TA)の先輩が担当することが多いです。その点、高専では、先生や専門技術を持った技術職員から直接指導を受けることができました。実習中も「なんでそうなると思う?」と考えさせるような質問も投げかけてくれて、自然とセンスが磨かれていったように思います。5年間積み重ねた経験の賜物なのだと、卒業して気づきました。

高専で卒業研究の中間発表をしたときの様子。
研究成果をまとめたポスターを前に先生や他の生徒とディスカッション(本人提供)

──現在は、どのようなお仕事をされていますか?

 現在は主にモーターを制御する電子回路の設計をしています。高専・大学で学んだことはとても役立っています。私たちが手がけるモーターやその回路は、幅広い分野で用いられ、工業的な用途を中心にさまざまな装置で使われています。性能や信頼性を維持し、さらに高めてゆきながら、小型化や高機能化といったお客様ごとの要望も満たしていく必要があります。

 複数の要求を満たしながらの設計はなかなか大変ですが、いま新製品を一緒に担当しているメンバーが偶然にも皆、元高専生で、意気投合して頑張っています(石田さんの他、沼津高専、広島商船)。また、他部署にも高専の卒業生がいるので、高専生の活躍の場は多いと思います!

【取材・文】堀川 晃菜(長岡高専2007年卒)

to_top