高専で得た「実践力」と友人は一生の財産

松川 祥さん

ルビコン株式会社 製造本部 電源BUセンター 電源設計課

松川 祥

電源設計者として活躍する本校卒業生の松川祥さん。回路の動作を確認する様子(所属先提供)

経 歴

2007年 長岡高専 電気工学科(現・電気電子システム工学科) 卒業
2009年 長岡高専 専攻科 電子機械システム工学専攻 修了
専攻科卒業、情報通信機器メーカー勤務を経て2016年より現職

高専から始まった私のキャリア

──高専に入学するときは、どんな心境でしたか?

 実は、自分ではあまり覚えていなかったのですが、今回のインタビューを受けるにあたり、親に聞いてみたところ「学校見学会に参加してからは『絶対に高専に行く!』と言っていた」そうです。入学の時点では、まだやりたいことは、そこまではっきりしていなかったように思いますが、それを探すようなつもりで高専に飛び込んだのでしょうね。

──いきなり専門教育を受けることに不安はなかったですか?

 それが蓋を開けてみたら、すごく楽しくて。たしかに、高度な技術・知識を学ぶので勉強は簡単ではないですが、基礎から応用まで段階的に学べるので、そこまで不安を感じる必要はないと思います。演習・実習が充実していて、回路のはんだ付けをしたり、この動作をするにはどんな回路を組めばよいか考えたりと、いろいろな実験をしました。特に3年生以降は専門教科のウェイトも増えて、がっつり! しっかり叩き込まれた土台は、現在の電気回路を設計する仕事に非常に役立っています。

──学生生活では、仲間の存在も大きかったですか?

 そうですね、寮に入ったことで、特に他学科とのつながりを得られたのは良かったです。寮で一緒だった友人たちとは、今でも頻繁に連絡を取り合っています。その中に専門分野の違う友達がいると視野も広がります。高専に入って、工学系全般を好きになれたのは、そんな友人たちとの情報交換が楽しかったおかげですね。

──長岡高専の専攻科に進学されたのですね。

 本科卒業後の進路は専攻科一択でした。本科4年生の後期から電磁波を扱う研究室に所属し、その研究を続けるために専攻科に進学しました。私が熱を注いだのは、パソコン上でアンテナの解析モデルを構築し、電波がどんな方向に飛ぶのか等をシミュレーションし、それを実際に確かめるといった研究です。アンテナを使って長岡の降雪量を調べる実験もしました。本科と専攻科の2年間の計3年半、腰を据えて研究に取り組むことができ、私の中で高専生活といったら「研究」が真っ先に思い出されます。

──専攻科では普段どのように過ごしましたか?

 長岡高専の専攻科では、電気電子システム工学科は機械工学科・電子制御工学科と融合して電子機械システム工学専攻になります。本科生は学科(クラス)ごとに、決まったホームルームがありますが、専攻科になるとそれがなくなります。朝、登校したらまず研究室に行き、講義を受ける時間以外は、基本的に研究室で自分のテーマに取り組んでいました。

転職で実感! 高専生の底力

──社会に出て、高専生の強みをどんなところに感じますか?

 最近、新入社員の人たちに話を聞くと、学生時代に測定機器を使った経験はほとんどなく、入社後に身に付ける人が大半のようです。高専生の場合は一通りの機器を扱える人が多いので、即戦力になれると思います。

 また、私は現在の会社が2社目で、同じ電気系でも少し分野の違う会社に転職したのですが、そのときに高専生の底力を感じました。自分にとって新しい分野でも、ある程度ベースがあると、話の内容もおよそ理解でき、図面の読み方や測定機器の使い方などコアなところは共通しているので、すぐに慣れることができました。転職から5年が経ちますが、今では、いろいろな仕事を任せてもらえるようになっています。

──最後に、後輩に向けてメッセージをお願いします。

 高専では特に1~2年生のうちは一般教養の科目も学びつつ、3年生以降になると専門科目がさらに増えていきます。専門的な知識を幅広く学ぶので、数式などを正確に覚え続けるのは難しいかもしれません。でも、専門用語や機器などに見覚え・聞き覚えがあれば、そこからまた調べることができます。

 頭の中に引き出しをたくさん作っておくことが大事で、高専はその引き出しの数を増やせる場所だと思います。ぜひ興味のアンテナを張り巡らせてどん欲に吸収してくださいね。

【取材・文】堀川 晃菜(長岡高専2007年卒)

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