高専は「骨太な技術者」になれる場所

韮澤 哲也さん

日野自動車株式会社 生産本部 生産技術領域 ユニット生技部

韮澤 哲也

トラックやバスの製造に携わる本校卒業生の韮澤哲也さん(所属先提供)

経 歴

2007年 長岡高専 機械工学科 卒業
2009年 信州大学 工学部機械システム工学科 卒業
同年、日野自動車株式会社へ入社

“人と違うこと”を貫いた学生時代

──ずばり、高専を選んだ理由は?

 「人とは違うことがしたい」という気持ちがあり、高専の説明会に参加して、ここなら何かしら高度な技術が身に着けられるだろう、と期待を抱いて入学しました。学科は、中学生の頃は航空業界に憧れていたこともあり、機械工学科を選びました。

──学生時代はどんなことに熱中しましたか?

 中学生から熱中していた水球を続けるため、高専に入ってからも水泳部に所属し、自主練習を続けました。他の県選抜のメンバーは皆、水球部のある高校に通っていましたが、私は週末に地元の柏崎のプールに通い、平日は長岡で泳力を鍛えていました。高校に相当する3年間は水球を続け、最後の大会を終えてから、4~5年生はスキー部をエンジョイしました!

 5年間過ごした寮も思い出深いです。周囲には独学で何かを究めている人も多く、それぞれ皆輝くものを持っていたので、個性的な友人たちに囲まれた濃い時間を過ごしました。

「体験と結びついた知識」は得難いもの

──機械工学科のカリキュラムで印象的だったのは?

 やはり実験と実習ですね。実験では、金属を引っ張ってせん断したり、油の流体実験をしたり、材料の科学や測定器の扱いなどを学びました。実習では、工作機械を使って実際にモノを作ったり、溶接をしたり、それもすごく楽しかったですね。製図の授業では、最初は手書きで図面を描きました。もちろんCAD(コンピューター支援設計、キャド)も習いますが、やっぱり体に染み込んだものは忘れません。デジタル化しても基本的なルールは同じですし、技術が進歩してもコアは変わらないと思います。現在はどこも数値制御の機械が主流ですが、そうした基本を身に着けていることは大きな強みで、いまだに高専の実験・実習で教わったことは大いに役に立っています

──お仕事をする中で、特にどんな時に実感しますか?

 私はトラック・バスのエンジンやトランスミッション(変速機)などの生産準備業務を担当しています。安全面と品質、そして生産コストの面を加味して最適な製造ラインを構築するのが仕事です。特に安全・品質・量・コストの折り合いをつけるのは、なかなか大変です。

 生産技術といっても、ただ製品図面の指示に従って生産工程を構築するわけではありません。「サイマルテニアス エンジニアリング」といって、設計と生産準備を同時並行で進めるので、生産効率を高めるために、ときには製品設計者に改良を求めることもあります。生産技術職は、製造現場と製品開発の橋渡し役なので、双方と議論を重ねるには幅広い知識が不可欠です。製品や製造装置の図面を読む機会も多いのですが、見方を知っていることはもちろん、その先のものづくりの工程まで理解できていないと、事前に問題点を抽出することができません。

 高専では、材料に関する基礎知識や加工法、検査・測定法はもちろん、機械工学の周辺領域である電気やプログラミングなども習う機会がありました。いずれも今の仕事に必要な知識・技術で、そう考えると、高専のカリキュラムは幅広く網羅されていたんだなと思います。

──社内に他にも高専の卒業生はいますか?

 大勢います! 長岡はもちろん、全国各地の高専から直接入社する人もいれば、大学・大学院を経て入社する人もいます。「高専卒」というのが一つのアイデンティティと言いますか、高専卒とわかると一気に距離が縮まりますし、逆に、肌が合うなと思ったら高専卒だったというのはよくあります。物事の考え方が近いと感じることも多く、一緒に仕事をできるのは嬉しいことですね。

高専を「才能を開花させる場所」にしてほしい

──入学を検討している中学生や、在校生にメッセージをお願いします。

 これは自分の反省でもありますが、もっといろんな世界を見ておけばよかったなと思います。5年間一貫した専門教育を受けられるのは大きな利点でもある一方で、長く同じ環境に身を置くと、どうしても人間関係も固定されやすくなります。知らず知らずのうちに視野が狭くならないように、価値観を固執させないように、積極的に新しい刺激を求めてほしいです。外の世界を知ることで、はじめて自分の内側にある強みにも気付けると思うので、ぜひ、ぶれない軸と広い視野を手に入れて、才能を開花させてください。

【取材・文】堀川 晃菜(長岡高専2007年卒)

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