高専は「15歳で“本物”に出会える場所」

大庭 広士さん

キヤノンイメージングシステムズ株式会社 開発本部 主任研究員

大庭 広士

ソフトウエア開発や研究活動で活躍する大庭広士さん(所属先提供)

経 歴

2002年 長岡高専 電子制御工学科 卒業
2004年 新潟大学理学部 物理学科 卒業後、同大学院の修士課程(博士前期課程)に進学
2009年 新潟大学自然科学研究科 自然構造科学専攻 博士後期課程修了、博士(理学)
2009年 アドバンスソフト株式会社 入社
2011年 キヤノンイメージングシステムズ株式会社 入社、トップエスイー15期生

高専の先生は特別な存在

──高専に進学しようと思ったきっかけを教えてください。

 長岡高専が中学生向けに開いたイベント講座に参加したことがきっかけです。もともとコンピューターや機械の制御、電子工作が好きだったので、電子制御工学科の一択でした。

──高専に入学して衝撃を受けたことはありますか?

 1年生の最初に、ある先生が90分授業の1コマをまるまる使って「生徒と学生の違い」を問いかけてくれたんです。中学校までは「生徒」として扱われ、勉強の仕方も進路のことも先生がコーディネートしてくれます。でも高専では「学生」として扱われます。字のごとく、自分で学ぶのであって、先生はそれをサポートする存在です。時間の使い方も含めて自己管理をして主体的に動く。それは研究者に必要不可欠な姿勢でもあります。

──大庭さんはどんなことに主体性をもって取り組みましたか?

 私は三条市から電車通学をしていましたが、目いっぱい高専生活を楽みました。部活はソフトテニス部に入り、学生会にも参加していました。学生会では広報部として、学生による高専の情報発信のプラットホームを立ち上げ、コンテンツの製作も行いました。一方、授業では課題もたくさん出ます。実験のたびにレポートを書くのは大変でしたが、今思えば必要なトレーニングでした。講義を受けただけでは、知識は完全に自分のものにはなりません。応用問題や実践的な課題に取り組み、経験を積む中で身に付いていくものだと感じています。

──高専生で良かったと思うことは?

 1学科1クラスなので5年間、同じ志を持った人たちと切磋琢磨できたことは良かったです。何より、高専には学生の知的好奇心を刺激してくれる先生と、高いレベルで専門教育を受けられる環境があります。15歳から大学と同等の研究設備に触れられるのは恵まれた環境だと思います。カリキュラムにも特徴があります。例えば、数学の微分積分は高校生では習わない人もいますが、高専生は比較的早く習得し、物理の力学や、他の専門科目でもすぐに微分積分の出番が訪れます。学びの必要性を実感できるので、暗記科目のような感覚には陥りません。

──「高専の先生」の特色とは?

 高専の先生は専門課程の先生はもちろん、一般教育科の先生も含めて「研究者」の顔を持っています。低学年の頃の一般科目も専門科目と絡めて指導してくれます。例えば、同じ英語でも、コミュニケーションが専門の先生、文法構造が専門の先生など異なる視点を持っています。研究者としてその分野を俯瞰的に高い視点から捉えているので、授業もユニークです。さらに企業で活躍していた先生も多く、学術的にも、社会の実践面においても尖った教育を受けられるのが最大の魅力だと思います。

高専生の武器は「手と頭を一緒に動かせること」

──大学で物理学を専攻されたのは、キャリアチェンジだったのですか?

 実は、電子制御工学科にいた頃も、物理学は私のテーマでした。目覚めきっかは高専の一般科目の物理の授業でした。実験では表面張力を測ったり、金属棒を叩いて音速とヤング率(弾性率)の関係を求めたりする一方、講義では物理法則と現象の関係が理論的に結び付くところが面白かったのです。特に電子制御工学科では数学や物理を重点的に履修するので、すっかりのめり込みました。

──高専の卒業研究はどんなテーマだったのですか?

 分子動力学といって、分子の動きをコンピューターでシミュレーションして、物質の性質を予測する分野があります。これに対し、どうプログラミングをすれば、膨大な計算量をいかに効率よく、高速で処理できるか検討するのが研究テーマでした。大学では、分子よりさらに小さな原子を対象に原子核理論を専攻しました。

──学んだことは、お仕事にどのように生かされていますか?

 大学の博士課程を修了後はコンピューターシミュレーションを行う東京の会社に就職しました。その後、新潟にUターンし、現在の会社に転職しました。実は、今の会社の方が、より制御工学の王道と呼べる領域なので、私としては物理から制御に戻った感覚です。高専で幅広く基礎を身に付けておいて良かったと思います。

 高専で身に付けたことは、必ず社会で役に立ちます。それは知識そのものというより、考え方であり、経験から得られた知識です。高専生は「手を動かしながら考えらえる」とよく言われます。これは未知のことに挑む研究者、新しいものを創造する技術者にとって大きな武器となります。

普段の業務の様子(所属先提供)

──学生の皆さんにメッセージをお願いします。

やりたいことには臆せずチャレンジしてください。研究室に入るまでとか、大学に入ってから、と待つ必要はありません。高専の先生はやる気のある学生に柔軟に対応してくれるはず。高専のリソースを最大限に活用して、自分で可能性を手繰り寄せて下さい!

【取材・文】堀川 晃菜(長岡高専2007年卒)

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