高専で培った「伝える力」が役に立っています

皆川 智子さん

国土交通省 関東地方整備局企画部 広域計画課幹線道路調査係

皆川 智子

子育てをしながら国家公務員として活躍する本校卒業生の皆川智子さん(撮影:漆原次郎氏)

経 歴

2007年 長岡高専 環境都市工学科 卒業
2009年 信州大学 工学部 社会開発工学科(現・水環境・土木工学科)卒業
同年、関東地方整備局に入局。2017年より現職。

「楽しそう!」で迷わず決意

──高専を選んだ理由は?

 兄が長岡高専に進学していて、兄の姿を見て「楽しそうだな」と思い、迷わず進学を決意しました。環境都市工学科を選択した理由は、建物やまちづくりに興味があったからです。

──実際に進学してみて、どうでしたか?

 測量実習や、段ボールで橋梁をつくり強度を競いあうなどの実験の機会が多くありました。こうした授業の中で、自分の頭で考えながら手を動かすことは、とても楽しかったです。そこで積極的に学習する姿勢が身に付いたと思います。また、実習後はレポートの提出があるので、定量的に物事を示すことや、文章の書き方など「伝える力」が鍛えられました。

 4年生の後半からは研究室に配属されます。自分の興味がある研究ができたことはもちろん、同じ研究室のメンバーと励まし合いながら学べたことは、本当に良い思い出です。

──卒業後の進路はどのように決めていきましたか?

 3~4年生の頃から都市計画を学ぶにつれて「景観」について興味を持ちました。当初は、高専を卒業後は地元で就職しようと考えていたのですが、両親に相談し、協力を得て、方向転換することにしました。そして、景観の研究をしている先生がいる大学を探し、信州大学への進学を希望しました。

住みよい街づくりに貢献したい

──編入学後の生活はスムーズにいきましたか?

 信州大学を含め、多くの国立大学では、高専から編入すると3年生になります。専攻は大きく変わらなかったので、それほど戸惑うことなく、スムーズに大学生活に移行しました。大学3年の夏頃からは、就職活動も始まり、国土交通省への訪問や面接などを経て、約1年後に内定をもらいました。

──大学では、どのようなことを学びましたか?

 大学3年生の時には、長野市の観光マップを作るプロジェクトに参加しました。実際にお店の人にヒアリングもして、現場に出てものをつくる喜びを感じましたね。そして、街づくりのことなど学ぶうちに、次第に景観のこと以外にも興味がわくようになりました。

 4年生になると、土木工学の分野でシミュレーション解析をする研究室に入りました。指導教官と、高専生の時に経験した長岡地震のことを話す機会があり、そこから「リスク管理」を研究テーマに据えることになりました。

──国土交通省では、どのようなお仕事を経験されてきましたか?

 関東地方整備局に入局後は、いくつかの部署に配属されました。横浜国道事務所では、道路工事を担当し、首都圏中央連絡道路(圏央道)など、新しい道路を建設する際の設計にたずさわりました。費用の計算や、重機の搬入など、現場に出ながら、実際に道路をつくるために必要な情報を集めていきました。

 こうした仕事でも、物事を順序立てて論理的に考えたり、それを文章で説明したりすることが求められます。高専で培われた「伝える力」は相手にわかりやすく説明する際にとても役立っていると感じました。

 その後、新卒採用の人事担当を経て、現在は、大規模な調査の実施に向けて、調整や計画を進めています。具体的には、都市における人の移動に着目した「パーソントリップ調査」や、モノの動きを捉える「物資流動調査」といった調査で、これらのデータはまちづくりの基礎資料になります。

 私は特に、自治体や高速道路会社など関係する団体がうまく連携できるように、協議会の運営などを担当しています。いろいろな業務を通じて、多くの人が住みよい街づくりに貢献していけたらと思っています。

──最後に後輩へのメッセージをお願いします。

 高専では選択科目も多く、外見などに関する校則もそれほど厳しくないため、早いうちから大人として扱われ、自分で決められることが多いと思います。勉強もそれ以外のことも、チャレンジするチャンスがたくさんあると思うので、楽しいと思えることをみつけたら、どんどん前のめりで取り組んでください。

【取材・文】堀川 晃菜(長岡高専2007年卒)

※皆川さんが登場する『工学部』(漆原次郎著・ぺりかん社)も工学系に興味のある方におすすめです。

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