USBメモリ活用講座
【実践編・W32TeX 文書作成環境ポータブル化】

< 最終更新日: 2023-12-07 >

ここでは USB メモリに角藤亮先生の W32TeX(x86) や,TeX 文書作成に関連するソフトをインストールして,ポータブルな TeX 組版環境を構築する方法を紹介します. 高専生が生まれる前から連綿と使われている TeX も,様々な改良・拡張が加えられて進化しています. 最初期から使われてきた (p)LaTeX や upLaTeX を「レガシー TeX」,より新しい XeLaTeX や LuaLaTeX を「モダン TeX」と呼び分けるようになりつつあるようです.

レガシー TeX は,ページ内の文字の配置を定める組版処理では文字を囲む箱の寸法情報を使い,字形情報は含まない DVI (DeVice Indepent) 形式のファイルを出力します. そして,画面表示 (プレビュー) やプリンタへの印刷を行う段階で,実際の字形情報を描き込みます. このようにすることで,現代の技術水準からすれば著しく演算能力や記憶容量が乏しいコンピュータでも,全く見劣りがしない高品質の出力を得ることができました. その一方で,何種類ものフォントを自在に使い分けることが難しいという制約がありました.

現代のコンピュータやスマートフォンでは,拡大縮小が自由なアウトラインフォントを,フルカラー高精細ディスプレイ上で滑らかに見えるようにアンチエイリアシング処理まで加えてリアルタイム表示することが,いとも簡単にできてしまいます. OpenType 形式のアウトラインフォントをそのまま組版処理に用いて,直接 PDF (Portable Document Format) ファイルとして出力してしまえるのが,モダン TeX の特長です.

これまで本講座では,容量が小さめの USB メモリにもインストールできるように レガシー TeX をポータブル化する方法を紹介してきました. しかし,細かい設定作業がややこしく面倒という声もありましたので,ディスク容量はあまり気にせず,確実かつ手軽にモダン TeX まで利用可能な組版環境の構築を目指して改訂を行うことにしました.

このポータブル TeX 組版環境は,Windows 10 のプラットフォーム上で動作します. ポータブル TeX 組版環境は,次に示すいくつかの要素で構成されています. それぞれについて簡単な説明をつけていますが,より詳しくはリンク先の Web ページの内容を読んでください. このページの更新日 (2023-12-07) より日付の古い改訂前のコンテンツには,最新の環境と異なる情報が含まれていますのでご注意ください.

W32TeX ポータブル化 (最終更新日: 2023-12-07)
TeX 組版環境を構築するために必須です. これだけで TeX のソースファイルをコンパイルして,PDF ファイルを生成することができます. また,文書には既存の画像ファイル (JPEG または PNG) を貼り付けることも可能です.
Ghostscript ポータブル化 (最終更新日: 2023-12-07)
ドローソフトで描いた線図 (PS/EPS/PDF) をキレイに TeX 文書に貼り付けるには Ghostscript が必要になってきます. dvipdfm(x) や dviout から呼び出されて,裏でフォントの変換処理をすることもあります. Ghostscript にはいくつかのバリエーションがあり,画面表示させるためのソフトウェアとの組合せにもいくつかの選択肢があります.
TeXworks と upLaTeX (最終更新日: 2023-12-07)
W32TeX に標準で含まれる TeX 組版の統合環境 TeXworks で日本語 (和文) の文書を扱うには和文フォント埋め込み設定が必要です. さらに組版の内部処理を Unicode で行う upTeX/upLaTeX を組み合わせると,文書内で利用できる文字に関する自由度が大幅に高まります.
texdoc ポータブル化 (最終更新日: 2023-12-07)
W32TeX に付属の膨大なドキュメントを読むには,texdoc コマンドが便利です.この texdoc コマンドをポータブル環境でも活用しましょう.
TeX 欧文フォントパッケージ活用 (最終更新日: 2023-12-07)
W32TeX ポータブル化によって利用可能な欧文フォントを整理して紹介します. CTAN に登録されているフォントパッケージの追加・利用法の例も紹介します.
TeX2img ポータブル化 (最終更新日: 2023-12-07)
TeX の美しい数式を Web ページに貼り付けたり,ワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどの Windows アプリケーションに貼り付けて利用したい場合には,数式を画像ファイルとして保存できると便利です. TeX2img は TeX のソースコードを入力すると,それを EPS/EMF/BMP/JPEG/PNG/PDF/TIFF 形式の画像ファイルとして出力してくれるツールです. 画像処理ツール ImageMagick のポータブル化についても解説しています.
gnuplot ポータブル化 (最終更新日: 2023-12-07)
gnuplot は数式やデータから 2D または 3D のグラフを描画するソフトウェアです. グラフを EPS や PDF で出力できるので,TeX 文書に美しいグラフを貼り付けることができるようになるかもしれません.
【参考】dviout for Windows ポータブル化 (最終更新日: 2023-12-07)
TeX は一般的なワープロソフトが採用している WYSIWYG (What You See Is What You Get) と異なり,文書を入力するソフトウェア (エディタ) と,仕上がりを確認するソフトウェア (プレビューア) が分離されています. プレビューアとして,最近では PDF ビューアという選択肢もありますが,和文の TeX 文書のプレビューアとしては dviout for Windows が定番です.
【参考】WinShell ポータブル化 (最終更新日: 2023-12-07)
WinShell は TeX 専用のエディタの一つで,コンパイルやプレビューアの起動をボタン一つで実行するような,統合環境的な機能も持っています. しかし,古さゆえの問題点もあるため,本講座では積極的には推奨せず,参考情報として紹介します.

USB メモリ活用講座付録で,TeX で実験レポートや卒論を書く上で参考になりそうなことを紹介していますので,あわせてご覧ください.