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研究紹介

 次世代の通信方式をめざして、多様な形態の通信システムが可能なスペクトル拡散(SS)・ワイドバンド通信システムを中心に、符号分割多元接続CDMA、直交周波数分割多重OFDM等、各種方式の構成法、信号処理方式の研究を行っている。 SS方式とは、情報によって高速の符号を変調し、情報のスペクトル幅を非常広く広げて送信する方法である。これにより多くの付加価値、すなわち、耐妨害性能、秘匿性、測距、ランダムアクセス等の新しい機能が生み出される


太刀川研究室では主に以下のようなテーマについて研究を行っています。



スペクトル拡散方式



 スペクトル拡散通信(Spread Spectrum Communication:SS)とは、情報信号のスペクトルを、最低限必要な帯域よりはるかに広い帯域に広げて伝送する方式である。その際、情報信号と独立な符号によってスペクトルを拡散させることで符号分割多元接続(Code Division Multiple Access:CDMA) 通信を可能としている。

SS通信の主な特徴
(1)スペクトルを広帯域に広げることにより、各種の雑音や伝送路の変動に強くなる。
(2)同一帯域で、多数の局がランダムアクセスできる。
(3)PN系列がわからなければ傍受できない。

主な拡散変調方式
・直接拡散(Direct Sequence:DS)方式
・周波数ホッピング(Frequency Hopping:FH)方式
・時間ホッピング(Time Hopping:TH)方式


○マルチプルアクセス(多元接続)


 マルチプルアクセスの方法として、(a)TDMA(時間分割多元接続)、(b)FDMA(周波数分割多元接続)、(c)CDMA(符号分割多元接続)およびそれらを組合わせた方式が知られている。 (a)のTDMAは時間軸上での直交性を、(b)のFDMAは周波数軸上での直交性を、(c)のCDMAは符号による直交性を利用してチャネル間の分離を可能にしている。マルチプルアクセスは衛星通信や移動体通信のように1対n、あるいはm対nの通信で使用される。

電灯線伝送路を使った通信

 電灯線通信(Power Line Communication:PLC)は、電話線にデータ信号を乗せるDSL(Digital Subscriber Line) のように、家庭内に電力を供給する電灯線にデータ信号である高周波信号を重畳して通信する技術である。
しかし、電灯線は本来情報伝送用の伝送路ではないため、波形歪みやインパルス性雑音などの発生によりかなり劣悪な環境である。



PLCの利点
(1)通信のための新たな配線が不要。
(2)コンセントがあればどこでも通信ができる。

PLCの欠点
(1)伝送路特性の変動(TV、冷蔵庫などの負荷変動による)。
(2)インパルス性バースト雑音、CW雑音などが多く存在する。



マルチキャリア変調方式

 マルチキャリア方式とは送信信号を複数の搬送波に分割して送信する伝送方式であり、代表的なものにOFDM(Othogonal Frequency Division Multiplexing)方式がある。一般に移動体無線通信においては遅延波の影響で伝送路がマルチパス伝送路となるため、信号は伝送路中で大きな歪を受けることになるが、OFDM方式は信号を並列伝送するため、それぞれのスペクトルの帯域幅が狭くなり、その影響を軽減することができる。
また前述のCDMA方式と組み合わせることで、更なる特性の改善が見込める。



OFDM変調の利点
(1)周波数選択性フェージングに対して強くなる。
(2)FFTを用いることで変復調可能なため、ハードウエアにおける簡略化が可能。
(3)スペクトルを重ねて伝送するので、周波数利用効率が上がる。



超広帯域インパルス無線

 超広帯域(UWB)インパルス無線とは搬送波(情報を変調するためのコサイン波)を用いずに、1ナノ秒(nsec)以下という非常に幅の狭いパルス(インパルス波)を用いた、非常に広帯域な周波数幅(数GHz〜数十GHz程度)を使用する無線システムある。この方式を用いることにより、従来に比べて高いデータ伝送速度を、より少ない消費電力で実現することが可能となる。


UWBの利点
(1)電力スペクトル密度が極めて低いので、既存の通信システムとの与干渉・被干渉が少なく、共存の可能性である。
(2)常に広い帯域を占有(GHz単位)しているので大容量多元接続・超高速伝送(数百Mbps)が可能である。
(3)極めて短い(nsec単位)パルスを利用しているので、高いパス分解能力がある。
(4)搬送波無しで信号放射時間が極めて短いため、小型・低消費電力のシステムを構築可能。