長岡高専

長岡工業高等専門学校・電子制御工学科

< RSSによる更新情報 最終更新日時: 2023-02-02 >

クローズアップEC【Vol.012】
特集:R01年度卒業研究,表彰テーマの紹介

金賞
「深層学習を用いた感情解析システムによる集中度の定量化」
 中田亘(制御工学研究室/指導教員 外山)

近年,オンライン学習サービスなどの遠隔教育が社会的に注目を集めているが,通常の授業形式と比べ遠隔教育ではコミュニケーションをとることが困難であることは容易に想像できる。 また,通常の授業形式においても,教師1名に対する受講学生が増加するほど,学生個々の表情を把握するのは困難となる。 そのような状況下では,クラスの雰囲気といったものを可視化し,教員に提示するシステムの構築が望まれる。

そこで本研究では「クラスの雰囲気の可視化」の第一段階として,学生の集中度の可視化を試みる。 まず深層学習を用いた感情解析方法を用いて授業内における学生の感情を解析する。 これにより,学生の顔画像と,それに対応する感情のデータを収集する。 そのデータに対して複数の教員が集中度判定を行う事により,感情と教員が集中していると感じる表情の関連性を明らかにした。 感情という情報をコンピュータで扱うにあたり,本研究ではラッセルの円環モデルを用いた。 これは人間の多様な感情を幸福度,覚醒度の二つの指標から成る連続な空間で表現する感情表現モデルである。

撮影した学生の顔画像に対してラッセルの円環モデルで表現される感情を推定し,又3人の教員による集中度判定を収集した結果,教員が集中していると感じる感情は,ラッセルの円環モデルにおいて原点近傍第二象限であることがわかった。

銀賞
「有機FETにおける銀電極の表面酸化処理による電気特性改善」
 酒井龍一(有機光デバイス研究室/指導教員 皆川)

【目的】有機電界効果トランジスタ (OFET) は柔軟性,伸縮性に優れるという特長があり,人工皮膚シートやバイオセンサなどへの応用が期待されている。 しかし,高感度のセンサを実現するためには,出力電流が大きくダイナミックレンジの大きいOFETが必要とされる。

これに対し,我々は一般的なp型有機活性層材料であるpentacene (ionization potential (IP): 4.7 eV) を活性層に持つOFETにおいて,電極/活性層界面に酸化銀(Ag2O)を形成することでコンタクト抵抗を低減し,出力電流を増大できることを報告した。 しかし, pentaceneより大きいIPをもつ有機活性層材料を用いた場合でも,酸化銀の形成により出力電流が増大できるか明らかにされていない。

そこで本研究では,IPの異なる有機活性層材料をもつOFETを作製し,電極/活性層界面に酸化銀を形成した際の各素子における出力特性およびコンタクト抵抗がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。

【結果・考察】図に示すように,DPAを用いたOFETの場合,電極の酸化処理をしない素子は出力電流が小さく動作が確認されなかった。 これに対し,銀(Ag)電極の酸化処理をした素子では良好な電気特性が得られた.特に,酸化処理を行った素子はmolybdenum trioxide (MoO3)蒸着膜を挿入した素子より優れた特性が得られた。 これはAg2OのWFが6.3 eVとDPAのIPやMoO3蒸着膜のWFよりも大きいため,DPA層から電極表面への電子移動が促進された結果,DPA内へのホール注入性が向上したためと考えられた。

銅賞
「二層型有機EL素子における有機ヘテロ界面混合層の挿入と温度特性の関係」
 Chimpalee NANTAPHON(有機光デバイス研究室/指導教員 皆川)

【目的】有機発光ダイオード (OLED) は薄型, 軽量, 柔軟性といった特長があり屋内外を問わず, 多目的なディスプレイとして応用されている。 しかし, 屋外で利用される有機ELディスプレイは環境温度の変化によって駆動電圧が上昇し, 寿命が短くなってしまう問題がある。 そこで本研究では, 素子の長寿命化に効果があると報告されている混合有機層をもつOLEDを作製し, 環境温度の変化によってどのように駆動電圧が変化するのか明らかにする。 さらに, 混合比率を変化させた際に, 電気特性がどのように変化するか評価することを目的とした。

【結果・考察】図にα-NPD層の混合比率に対する伝導電流の活性化エネルギーの変化を示す。 α-NPDの比率が高いほど活性化エネルギーが減少する傾向を示した。 これは, α-NPDのホールトラップ準位の深さがAlq3よりも浅いためと考えられる。 一方, α-NPDの比率が50%より高くなると活性化エネルギーは上昇した。 これは, 深い電子トラップ準位を持つα-NPDの比率が高くなりすぎたために, 陰極から注入された電子伝導の温度特性が大きくなったと考えられた。 本実験ではα-NPDとAlq3の混合比率が1:1 (20 nm) の時に活性化エネルギーは小さくなり, 温度依存性が小さくなることが明らかになった。

特別賞(学会発表を行った学生)

  • 「酸化処理した銀電極を持つOFETの作製と評価」,酒井龍一
  • 「酸化性有機ホール注入層をもつ有機EL素子の連続駆動特性」,平澤大暉
  • 「Evaluation of temperature characteristics of mixed-layer type organic electroluminescent devices」,CHIMPALEE NANTAPHON
  • 「重力波の観測データに対するリカレントニューラルネットワークを用いたノイズ除去の検討」,住安宏介
  • 「機械学習を用いたトマトの生育条件評価」,風間鼓太朗
  • 「Evaluation of Sense of Balance by Brain Function Analysis with NIRS」,小此鬼瑞季
  • 「A Quantitative Evaluation Method of Students’ Concentration Using Deep Learning」,中田亘
  • 「Development of safe AI wild animal population management system」,村山亮貴
  • 「電気的共振・反共振間における大振幅振動下での圧電振動子の非線形特性」,井上将太
  • 「音響放射力を用いた非接触方式での書字覚検査方法の検討」,櫻井莉乃
↑Top